シンガク図鑑プレゼンツ
沖縄の高校力
●昭和薬科大学附属高等学校 科学部
泡盛製造に適した性質を持つ新しい酵母を発見。
先輩たちから受け継いだ研究を続けて新しい泡盛の商品開発に繋げたい。
諦めないことや冷静に考えること
研究成果をきちんと人に伝えることの
大切さを知ることができた
最初は全く理解できなかった
「新たな泡盛用酵母の探索」。
沖縄を代表する酒である泡盛は、麹菌と酵母の発酵を経て蒸留される。現在、沖縄の泡盛づくりに使用されている酵母が「泡盛101(イチマルイチ)号」という名前の酵母。沖縄の酒造所のほとんどがこの酵母を使って泡盛を製造しているため、どうしても泡盛の香りや風味が似てしまうという現状があるという。沖縄の地域産業の活性化、泡盛の多様化と価値向上を目的にスタートしたのが、昭和薬科大学附属高等学校の科学部が行っている「新たな泡盛用酵母の探索」という研究だ。2014年から研究に着手し、昨年ようやく泡盛の製造に適した性質を持つ新しい酵母を発見することができた。約3年という長い時間を費やした研究だけに、ドラマチックな発見のエピソードを想像するが、実際には少し違ったようだ。「先輩たちが引退し、自分たちが研究を引き継いですぐの夏にたまたま酵母を発見しました。これはとてもラッキーなことで、今までの先輩たちの研究があったからこそ発見することができたんだと思っています(比嘉)」。「僕は中学のころから研究に挑む先輩たちの姿を見てきました。発見の報告を受けたときは、一生懸命に研究に取り組む先輩たちの姿を思い出して思わず泣いてしまいました。これからもっと僕たちが頑張らないといけないという気持ちにもなりました(賀数)」。
先輩方に教わったこと、
自分たちが後輩に伝えたいこと。
「入部当初は研究内容が全く理解できませんでしたが、先輩に教わりながら実験を重ねたことで理解を深めることができました。だから後輩には、自分が疑問に思ったポイントを噛み砕いて説明したいと思っています。早く理解することで、もっと高みを目指して研究に没頭してもらいたいです(與久田)」。「先輩たちが培ってきた伝統を今後も受け継いでいくために、僕も後輩をしっかりと指導していきたいと思います(渡久地)」。科学部での研究を通して、諦めないことや迷ったら誰かに相談することの大切さを学んだという皆さん。「これからは発見した新しい酵母と現在主流である101号酵母の比較・評価を続け、いつか自分たちが発見した酵母を用いた泡盛を商品化することが目標です(比嘉)」。
與久田 光咲 Misaki Yokuda
普通科2年。「研究で行う実験が楽しい。実験を重ねるごとに、研究内容を理解できるようになりました」。
比嘉 百 Momo Higa
普通科2年。「研究成果を伝えるプレゼンを担当して、伝えることの難しさと大切さを学ぶことができました」。
賀数 九十 Kyuto Kakazu
普通科2年。中学の頃に科学部の先輩と交流したことが入部のきっかけ。「将来は酒づくりに携わる仕事に就いてみたいです」。
渡久地 政泉 Masami Toguchi
普通科2年。元々科学が好きで科学部に入部。「大学で物理系の研究をやってみたい。パソコン関係の分野にも興味があります」。
【実績】
● 第40回全国高等学校総合文化祭自然科学部門 プレゼン発表 文化連盟賞受賞
● 第56回沖縄県生徒科学賞作品展 レポート・ポスター審査 最優秀賞受賞 読売新聞社賞受賞
● 第60回日本学生科学賞 レポート審査 入選3等受賞
● 平成27年度九州高等学校生徒理科研究発表大会 プレゼン発表部門 優良賞受賞、ポスター発表部門 優良賞受賞
● ジュニア農芸化学会2017ポスター発表 参加