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「食べる」ことに感謝の気持ち!北部農林高校

2013年03月02日

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シンガク図鑑プレゼンツ
沖縄の高校力
北部農林高等学校 沢岻 大規くん、玉城 福美さん

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左:沢岻 大規くん 右:玉城 福美さん

interview

「食べる」ことに感謝の気持ち!
命を育む技術をいかして、沖縄の畜産業に貢献したい

チャーグーをもっと広めたい 仲間と一緒に取り組むプロジェクトでFFJ最優秀賞を目指す
FFJ…日本学校農業クラブ連盟(Future Farmers of Japan)でのプロジェクト発表会

県内でも牛、豚、鶏といった主要家畜類を全て飼育している高校はここだけという、広大な寄合原農場を有する北部農林高等学校熱帯農業科。中でも、北部農林高校を一躍有名にしたのが、沖縄在来種のアグーと米国系品種デュロックを掛け合わせてつくったオリジナルのブランド豚『チャーグー』で、2005年12月には商標登録もされている。今回は熱帯農業科畜産コース2年生の中から、沢岻くん、玉城さんに授業のことや、チャーグーについてのプロジェクトなど、沖縄の畜産業界を明るくさせるような話を聞くことができた。

動物たちの世話を通して 命の重みを実感する日々

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牛は繁殖から出荷まで、ここで飼育。出荷を見送ることができないこともあるが、「出荷のランクはいつも気になる」と沢岻くん

高校に入るまでは、ただ動物が好きなだけだったというふたりであるが、実際に動物の飼育に携わってみると、思っていたのと随分違ったと話すのは沢岻くん。「先輩の世話の仕方を見ていて、可愛がるだけじゃダメなんだなと思いました。もちろん愛情はかけますが、おいしい肉になるためには厳しさも必要なんです」 また、ふたりとも家畜審査の資格を持っていて、牛や豚の状態を見ただけで、飼育状況の善し悪しが分かるのだとか。だから、自分たちが世話する動物たちを普段から厳しい目でチェックすることができると話す。そして、掃除や餌やりなどの肉体労働ももちろん大変であるが、精神的にもつらいのは、ニワトリの解体や、子豚、子牛の去勢。しかし、畜産を学んでいくうえで欠かせないことなので、全員がひと通りこなせるよう実習で教えられている。「でも、これがあるから、命の重みを感じるようになりました。それまでは食事を残すことも気にしてなかったけれど、肉も野菜も、元々は生きていたものたち。大切に食べるようになりました」と話してくれた。

チャーグーをもっと美味しく! 肉質改良プロジェクト

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生まれたてのチャーグー。北部農林では、月齢別に豚舎をわけて、繁殖や飼育を行っている

グルメ通の間では知る人ぞ知る存在のチャーグーだが、県内でもその名を知らない人は多い。しかし、沢岻くんが「おいしい。ほかの豚肉と全然違う」と話す通り、その肉質には定評がある。まだまだ出荷数は少なく、いつも食べられるというわけではないが、許田の道の駅での購入のほか、学校の即売会でも売られ、食べた人から「おいしかったよ」と言われるのが一番嬉しいと大城さん。もっとチャーグーを多くの人に知ってもらいたいと考え、現在肉質改善プロジェクトを発動中なんだとか。もともと、うま味成分であるアミノ酸が豊富で甘みの強い肉ではあるが、これを霜降り牛のように、脂味のサシがある肉質に改良できないかというのがその内容。今から取り組み始め、FFJでの研究発表会に出場し、最優秀賞をとりたいと考えている。これが実現できれば、チャーグーはさらに有名になり、生産量や販路も拡大できるかもしれないという、沖縄の畜産業界にとってもうれしい話題。近年日本の第一次産業は、外国からの輸入食品や後継者不足などの影響で将来安泰とは決して言い切れない。そんな中、沖縄の畜産業の未来を担う若者が育っているのは非常に心強いことなので、立派な畜産家目指して、これからも頑張ってほしい。



profile

沢岻 大規 Daiki Takushi
熱帯農業科畜産コース2年。動物のことが大好きで、子どもの頃から北農に入ることしか考えてなかったと話す、根っからの動物好き。入学して畜産の大変さを身にしみて感じながらも、将来は自分で牛舎を経営したいと話す

玉城 福美 Hukumi Tamashiro
熱帯農業科畜産コース2年。同じ北農出身のお兄さんに影響され、牛好きに。ここでしっかりと技術を学び、高校卒業後は沖縄県立農業大学校への進学を希望。将来の夢はフリーランスの人工授精士を目指す