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シカクとシゴトから進路を選ぶ【商業建設デザイン】

2018年02月18日

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今後V字回復が見込める建設業界
1992年の84兆円をピークに建設投資は落ちてきましたが、東日本大震災の復旧や2020年のオリンピックに向けて2011年から市場が回復してきており、2017年には55兆円まで伸びると予測されています。その中で店舗デザイン設計の分野である非住宅建築の占める投資割合は民間・政府を合わせて24.4%。巨大な市場と言えます。

[クリエイティブなアトリエ系か安定の組織系か]
建築の意匠設計は大きく分けて住宅設計と飲食店や商業店舗・映画館・病院・オフィス・商業複合施設などを専門とする非住宅設計(商業建築設計)に分かれますが、その中でも比較的規模が小さくデザイン性を重視するアトリエ系設計事務所と機能性や効率性を重視する設計事務所や大手建設会社の設計部門に属する組織系設計事務所に大別できます。どちらに進むかは個々人の感性次第ですので、将来を見据えて選択、または働きながら見いだしていければいいと思います。
2018春_商業建築デザイン

[1級建築士と2級建築士の違い]
商業建築デザイナーを目指すには建築士の免許は必須ですが、1級建築士と2級建築士は何が違うのでしょう。2級建築士の場合は建築物の広さや高さなどの規模に制限がも設けられています。店舗やオフィス・商業施設など小規模であれば2級建築士でも設計は可能です。対して1級建築士は制限が無く、超高層ビルや学校・病院・マンション・大型複合施設などあらゆる建物の設計が可能です。1級建築士の受験資格は2級建築士取得後、2年~4年の実務経験を要しますので高校生の君たちはまず2級建築士を目指すことになります。
※2級建築士取得後の実務経験期間は学んだ学校の単位により異なります。

[注目されるリノベーションとバリアフリー]
新しいものを創るだけが商業建築デザインではありません。近年にわかに注目されているのが古い建物に新たな価値を生み出すリノベーションです。より高いデザイン性や機能性を求められるもののやり甲斐のある仕事です。また、生活弱者のためのバリアフリー設計やさらに進んだ全ての人が利用しやすいユニバーサルデザインの追求など、時代の進化とともに斬新な発想が求められています。

interview
2018春_建築士005
デザイン性と機能性。建築にはどちらも大切な要素。
施主様の要望に柔軟に対応できる建築士でありたい

福祉分野で働くことを目指して大学へ進学したが、卒業後は建築士になるためにサイ・テク・カレッジに入学した前里さん。全く違う分野への転身に思えるが、福祉を学んだことが建築士を目指すきっかけになったという。「大学時代は福祉について勉強し、将来は社会福祉士になろうと考えていました。大学在学中に福祉施設へボランティアに行った際に福祉の現場を見て、働く方や利用者の方がもっと快適に過ごせる空間づくりに携わってみたいと思ったんです。20年前はバリアフリーやユニバーサルデザインといった設計が取り入れられはじめた時代。建築の面から福祉に関われるのではないかと建築士になることを決意し、大学卒業後にサイ・テクに入学しました」。それまで文系だったという前里さん。建築を学ぶうえで必要になる計算や構造力学などに悪戦苦闘したと在学中の思い出を語ってくれた。「数字が苦手で、高校を卒業したら一生数字には関わらないと思っていたほどだったんです(笑)。設計士として働き始めてから高校で勉強した公式を活用する機会があって、学生時代の勉強に無駄なことはないんだなと思いました。学校には建築士として一線で働かれている先生もいて、先生から建築業界の現状や現場の厳しさなど、実際の仕事について話を聞くことができました」。専門学校卒業後、建築事務所に就職し12年勤務。独立することをきっかけに1級建築士の試験に挑んだ。「独立後の仕事の幅を広げたいと思って1級の資格を取得しました」。自分で福祉施設を設計してみたいと建築業界に飛び込み、就職した設計事務所で実際に福祉関係の仕事に関わることができたそうだ。「実際に設計に携わってみると建築するときはいろいろな法的制限があることを知りました。いろんな条件や予算の制限があるなかで、自分なりのプランを提案させていただきました」。独立してからも老人ホームの設計を担当。使う人の動線を踏まえたプランを提案し、実際の設計に反映することができた。「現在は新築住宅の設計をメインに担当していますが、施主様によって、住まいに対する価値観はそれぞれです。日常生活の中で自然に運動ができるように、あえて段差を作ることを希望されたり、バリアフリーに対する考えも人によって違うんです。いろんなご要望に沿ったプランを提案するためにも、柔軟な思考で設計するように心がけています」。次はチャペルの設計にチャレンジしてみたいと考えている前里さん。建築を軸に自分の興味のある分野にどんどんとチャレンジしている。「住宅や店舗、照明など、建築士はいろいろな分野の設計を担当する機会があります。仕事の幅が広い分、自分の適性が見つけやすい業界だと思います。これから建築業界を目指す方には、恐れずに自分の好きな分野に飛び込んでみてと伝えたいですね」。

profile
1級建築士
前里 悦子 Etsuko Maesato
琉球大学 法文学部人間科学科を卒業後、建築士を目指しサイ・テク・カレッジに入学。建築事務所勤務を経て1級建築士免許を取得し、同じくサイ・テク・カレッジ出身で建築士のご主人と独立。現在は新築住宅の設計をはじめ、建築物の用途変更に伴う設計を行っている。

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