なぜ?なに?奨学金
宜野湾市の画期的な取り組み
市奨学金に準備資金導入
宜野湾市議会議員 比嘉 ノリヤス × 宜野湾市教育委員会
制度改正のきっかけ
比嘉ノリヤス議員 数々の奨学金制度がある中で、ほとんどが4月に申請して6月以降に支給されるため、準備金として入学前に受け取れる奨学金がないんですね。そのために進学を諦めている高校生もいるという実態を知り、宜野湾市から準備資金として活用できる奨学金を準備できないかと、昨年の6月に議会で提案したのがはじまりです。
島袋総務課長 実は私たちも「育英会奨学金」のあり方について課題を抱えていました。というのもここ数年利用者が少なく、さらに新規の申込も年々減少傾向にあるという実態がありました。(平成23年度…申込者10名/利用者8名、平成24年度…申込者・利用者ともに8名、平成25年度…申込者・利用者ともに5名)。奨学金の利用案内については、各高校の進路相談や大学を通し案内しているほか、市の広報誌やホームページなどで一般公募を行い、広く告知していました。それにもかかわらず利用者の増加が見られないのは、広報活動に問題があるのではなく、今の時代にそった制度のあり方を見直す時期なのでは…とノリヤス議員の一般質問を機に制度改正に取り組むことにしました。
これまでの運用方法と課題
上原主事 これまでの「宜野湾市育英会定款」では、4月に奨学生申込の後、5月に書類審査と理事会の審査があり、採用が決まると6月から翌年3月まで年10回にわたり、県内大学で3万、県外大学で5万円を貸与すると決まりになっていました。また、この奨学金は、「日本学生支援機構奨学金」や「沖縄県国際交流人材育成財団奨学金」から溢れてしまった方たちをカバーする目的で運営されていたため、他の奨学金との併用を不可としていました。
島袋総務課長 ノリヤス議員の一般質問を受けた後、「宜野湾市育英会奨学金」の制度を、実際に利用しやすい制度へと変革させるため、利用者に近い立場にいる高校や専修学校の進路担当の先生方と意見交換会を致しました。そのなかで「毎月の貸与は日本学生支援機構などを利用し、入学準備金として宜野湾市育英会奨学金を活用できれば、他の奨学金を補完でき画期的だ」とか「併用可にした場合、毎月の貸与以外に、9月か10月頃に入学準備金として一括貸与する制度があれば利用しやすい」との声があがり、今回の「入学準備金」の導入や「奨学金制度」の改正への参考意見として活用させていただきました。
制度改正のポイント
玉城教育長 現状では、国や県が運営している奨学金でも、入学前に準備金として貸与される奨学金制度がないため、入学準備資金のために教育ローンを活用し、奨学金が貸与され次第教育ローンを返還するという方法を取る例が多かったようです。そうした現状を踏まえ、一番必要とされている入学準備資金を無利子で貸与できる制度を導入しました。この「入学準備資金」は最大で50万円を一括貸与するもので、10名程度の採用予定で11月頭に公募したところ、採用人数を超える応募がありました。
上原主事 今年11月の公募が初となりましたが、次年度以降は6月と11月、年に2回の申込ができるようになります。6月申込ではAO入試に対応し、11月申込では一般推薦に対応するためのものとして入学準備金が活用できるというわけです。貸与人数はその年の予算によって変動しますが、年間15名から25名への貸与を予定しています。
上原主事 また、従来の奨学金制度も見直しました。これまで県内外の進路先で貸与額に差があったものを廃止し、30万・40万・50万の選択制を導入しました。貸与方法も、毎月の分割貸与と、6月と9月の年2回貸与のいずれかから選択できるようにしました。さらに他奨学金との併用も可能にし、不足分の学資を補えるようにしました。
制度改正へ向けた取り組み
上原主事 「入学準備金」をはじめとする奨学金の運営資金は、宜野湾市からの予算と、利用者の奨学金返還、そして企業からの寄付金によって成り立つため、安定的に育英会事業を運営できるよう、年間貸与者数、貸与額など数十パターンを想定し、平成58年頃までのシュミレーションを作成しました。貸与後の返還は、卒業後半年から始まりますが、不況による就職難やさまざまな事情により返還が困難とされる場合、本人からの申請後、審査を経て認定されれば、返還額の減額と返還期間の延長が認められます。そうした事態も想定しながらシュミレーションを作成したので、年間採用できる人数や予算を確定するのに時間がかかりました。また「入学準備金」の定款制作にあたり、沖縄県内には他に事例がない取り組みだったため、どのようなルール作りにしていくか、ひとつひとつ検討し進めていくのが大変でした。
島袋総務課長 6月の議会での一般質問から約5ヶ月の期間で、「入学準備金」の導入と、これまでの「奨学金制度」の見直しを図ったわけですが、年度途中でもいいから、なるべく早く需要に答える体制作りをしてほしいという希望に応えるため、スピード感も必要とされました。おかげさまで、11月に公募開始した「入学準備金」について新聞で掲載されたのち、宜野湾市だけでなく、他の市町村からの問い合わせも多くいただいています。残念ながら宜野湾市育英会奨学金の制度は、本市に3年以上住所を有する市民か、その子弟が対象となっていますので、この「入学準備金」の取り組みが沖縄県内他市町村へ拡充していくことを願っています。
高校生へのメッセージ
ノリヤス議員 大学教育への道を開くことは、社会に貢献できる人材を育成することにもつながります。宜野湾市だけでなく沖縄県全体で教育のチャンスを広げることで、より良い沖縄の未来を作る人材を輩出することになるわけです。また、奨学金を通して大学にいくチャンスを得たという実感は、自分もいつか人の役に立ちたいという動機につながります。それが「奨学金」のあるべき姿なのではと思っています。
島袋総務課長 宜野湾市の将来を担う子供達への支援ができるということは、明るい宜野湾市を築くことにつながっていきますよね。これから利用される方々の未来に期待したいですね。
玉城教育長 教育=人材育成ですよね。そういう意味では教育委員会に与えられた仕事というのは、とても価値のある仕事だと思っています。
社会へのメッセージ
ノリヤス議員 今回の宜野湾市の取り組みが新聞に掲載されたことで、那覇市議会議員の方からも、導入に至るまでの方法や経緯について問い合わせをいただいています。新設された「入学準備金」について、初年度にもかかわらず大きな反響を得ているということは、それだけ多くの人が待ちに待っていた制度だということです。こうした取り組みが、宜野湾市だけでなく多くの市町村に広がり、これからの未来を担う子どもたちを育成する機会が増えればうれしいですね。さらに、市が運営する「育英会助成金」は、市の予算、利用者の返還金に加え、各企業からの寄付で成り立っています。今回の是正に伴い、多くの学生が支援を求めて応募してくることが予想されます。予算が拡大すれば、それだけ多くの子どもたちの未来を支えることができるわけです。企業にしてみれば、より良い人材を雇用するチャンスも広がるわけです。ぜひ、多くの企業に、子どもたちの将来の可能性を広げる支援をいただければと思っています。
島袋総務課長 支援についての詳細は、宜野湾市教育委員会でお答えすることができますので、是非ご協力いただければありがたく思います。
教育に対する想い
玉城教育長 私は校長時代から教育のあり方について念頭に置いていることがあります。ひとつめは、学校は子どもたちの人格や体力を育て、学力の形成を行う場であるべきだということ。ふたつめは、全ての子ども達の可能性を開き伸ばすこと。そして、子どもに対して、かけがえのないひとりの人間として尊重すること。こうした教育方針を念頭におきつつ、学校が①楽しい場であり②興味や特技を活かせる場であり③わかる授業を行い④父母と教師、教師と生徒間で信頼関係を築く場となれば、教育で抱える多くの問題も解決するのではと感じています。今の社会では小学、中学は義務教育、そして多くの人が高校課程までの教育を受けることができますが、それ以上の教育になると、どうしても経済的な事情で諦めざるを得ない方達もいます。しかも今の時世は、経済格差がある時代。特に沖縄は全国的にみても経済的にまだまだ弱い立場にいる方々も多くいます。だからこそ、行政がそうした方々を支えて、教育のチャンスを与え、宜野湾市に戻ってくる仕組みが必要だと感じています。宜野湾市はそうした優秀な人材を活用して、市の発展に結びつけていくことができるわけです。「学びたいという思いに応え、人材を育成する」。それこそが教育の原点ではないかと思っています。
▼お問い合わせ、応募はこちらまで。
宜野湾市育英会(宜野湾市教育委員会内)
TEL:098-892-8280・8281
http://www.city.ginowan.okinawa.jp