Catch the dream INTERVIEW
katayabira
学校教育の中で夢を語れる場所がなかった
高校までは自分のことが嫌いだった 自信がなかった
でも人ってきっかけで変われる! 広い社会を見よう!
少しだけ人生の先を行くカタヤビラメンバーの活動は
そんな一人ひとりの思いや経験でつながっていく
そこに正答はない。
だけど何かが変わるかも知れない
『カタヤビラ』は、東京にある『NPO法人カタリバ』の活動に共感した数名の大学生の思いから、沖縄国際大学で学生団体として2008年4月に誕生した。大学生と高校生の「ナナメの関係できっかけ作り」を活動テーマに大学生を中心としたボランティアスタッフ(以下キャスト)が、授業の一貫として県内各地の高校で生徒たちと「語る場」を作るキャリア教育企画を行っている。親や先生、友達とは違った立場のキャストと自分の夢や希望、悩みや不安などを話し合い、高校生が一歩先を見つめて行動を起こすきっかけを作る活動は、今年で4年目を迎える。県内6大学の学生を中心に登録キャスト数も400人を超え、2010年度までに30企画を実現させた。一学生団体としての活動から始まったカタヤビラは大学生の運営によるNPO任意団体として注目を集めるまでになり、その活動の幅も広がりつつある。2011年6月29日に真和志高校の3年生を対象に行われた企画を取材し、その直後、現代表の牧志朝英さんと初代代表の金城円さんにインタビューする機会を得た。
より良い教育を目指したいという思い
それが『カタヤビラ』のはじめの一歩
真和志高校での午後、カタヤビラ代表の牧志さんはゲームや親の話、失恋、断念したサッカー選手への夢など、けっこう赤裸々なぶっちゃけトークを展開していた。人生を2・3歩先行く先輩として自分の経験を話すのがこの授業での彼の役割のひとつ。話を聞いてるみんなの目が次第に生き生きとしてくるのが印象的だった。この日参加した大学生や社会人のキャストは約40人。代表の牧志さんに限らず、会の活動は基本的にボランティアによって支えられている。大変ではないのか? 「メンバーはみんな、それぞれの目的ややりがいをぶつけながらカタヤビラを楽しんでいます。楽しめてるからこそ続けてるんだと思います」と、牧志さんは言い切る。そんなカタヤビラ、もともと初代会長の金城円さんが設立を思い立った理由って何だったんだろう。「大学時代は教師になりたいと思ってたんですけど、もっといろいろな世界を見て視野を広げないと子どもたちにいい教育はできないと思ってて。ある出会いをきっかけに民間からの教育現場への働きかけに興味がわいてきたんです。」そこから、後の副代表の福澤さんと金城さんの双子の妹と、大学を1年休学して各地のNPOをまわったという。特に東京の『NPO法人カタリバ』での2ヶ月間の研修では、代表の今村久美さんの生き方に刺激を受けたそう。「有名大を出て就職内定も貰っていたのに彼女なりの問題意識があって、ゼロからカタリバを立ち上げる道を選んだ。自分もそういう人になりたいし、沖縄の人にも変わったことやおもしろいことをやってるいろんな人の生き方を見せて、夢や希望をあげられたらいいなと思ったんです。」こうして、副代表とともに「3年間一緒に頑張ろう」と互いに約束カードを書いた。カタヤビラの誕生だった。立ち上げ直後は、チラシを貼ったり、説明会を地道に開いたり、友達つながりでメールを送ったりとキャスト集めに奔走した。受け入れ側の高校も不安の方が大きかったそうで、最初は理解してくれなかった。「母校のハンドボール部でやった企画が第1回目。それを新聞社が取材してくれて、ひとつ実績ができた。そこから理解してくれる先生方が出てきて、『2人の熱い思いがあるならやってみなさい』って言われた時はほんと嬉しかった。大変だったけど、パートナーがいたから心強かった。」と話す。
僕の「きっかけ」はNPOだった
次は後輩のための「きっかけ作り」
序々に活動の場を広げつつあったカタヤビラに、親のすすめのままに琉球大学に進学した牧志さんが加入したのは創設2年目。高校卒業間際に腰を痛め、サッカーの専門学校への道を断念した彼は、最初の1年間は学生生活をダラダラと過ごしていたという。「たまたま母校の成人式の実行委員をやったんです。その時、NPOもいいなと思い始めて」カタヤビラも含め、さまざまなNPO活動に参加するようになっていった。そこから、カタヤビラの代表を引き受けることになる。「NPOの活動を通して人ってきっかけで変われるなと実感しました。そんな自分に何ができるのだろうって考えた時に、次の後輩のために何かすることだと思った。」初代代表の思いは、こうして2代目に引き継がれたのだ。もちろん牧志さんなりに辛い時期もあったという。「いろいろな活動に関わり過ぎてて、つぶれそうになったことがあった。円さんに呼び出されて、『どっちやんの?』って迫られたこともありましたね」と笑う。切磋琢磨しながら、4年目を迎えたカタヤビラだが、活動の広がりとともに新しく見えてきたことも多い。授業の110分という時間に焦点を当てた今の学年企画だけでは、変わらない部分も多いと牧志さんは言う。「今後は月に数回とか定期的に高校生と会うようなワークショップもやっていきたい。」また、企画自体が「友達にはバカにされそうだし、親や教師からは頭ごなしに否定されそう。だから言えないと思っている高校生の『本音』を大学生が間に入って聞いてあげよう」と始まったものだが「毎日を一緒に過ごす親や教師や友達こそ逆に理解してくれる存在になれれば、もっと大きく変わるんじゃないか」とも。教師も交えたワークショップなどもゆくゆくはやっていけたらと話す。現在のキャリア教育企画を主軸に、ますます広がりを見せそうな今後のカタヤビラの活躍からも目が離せなさそうだ。
自分の殻を破ろう!
自分で人生をデザインしよう!
ゼロからイチを作り出すやりがいと
組織をつないでいくやりがい
組織を立ち上げた代表とそれを引き継いできた代表、2人のカタヤビラへの思いとは何だろう。金城さんは、「仲間とお金を集めて、いろんな人たちを巻き込んで、小さい規模ながらもゼロからイチを作り出すことの難しさと楽しさを同時に知ることがができました。大変なこともあったけど、今までの経験は、就職活動にしても、実社会で仕事をする上でも役に立ってると感じてます。カタヤビラはこのままの形で頑張っていって欲しい。今、個人的には、NPOの分野での総合的な地域づくりに興味があります。いずれは地域住民の声を聞きながら、行政とNPOで地域を作っていくという試みができたらいいなと思っています。」と、その経験を生かして、次のビジョンが見え始めているようだ。一方の牧志さんは、半年後には次の代表にカタヤビラを引き継ぐという状況。「僕は理系だったので、ハード面というか、資料ややり方を後輩に残さなくてはと焦った時期がありました。でも結局は人にスイッチが入らないと意味がない。今は、ソフト面である最初のカタヤビラメンバーの思いがつながれば、やり方はその時々のものでいいと思っています。」活動の中で印象に残っているのはどんなことだろうか。「進学クラスの生徒のやる気が起きないと悩んでた先生方と企画をやった時、授業の後で『あんなに生徒が笑ってるのは初めて見た。自分たちに笑顔が足りなかったんですね』と言われたのはほんとにありがたかった。それと、あるバイト先で偶然一緒になったのが企画に参加した子で、財布の中から約束カードを出して見せてくれたのも嬉しかった。こういう時、自分たちがやってることはちゃんと届いてるなって実感するんですよ。」と。そんな牧志さんも東京の新聞社への就職が内定しているという。「主人公が故郷を出て、だんだん成長して、最後にラストボスを倒すっていうRPGゲームが好きなんですけど、リアルで社会との接点を持って、実体験を積み重ねる方がおもしろいなって思いました。人には外に出ようぜ!って言ってNPO活動してるのに、自分が外に出ないのはどうかなと思って、県外での就活に挑戦しました。」と自身の活動でも背中を押された一面もあるようだ。
自分のことを好きになろう
故郷を飛び出し現場に行こう
インタビューの最後に、そんな2人から沖縄の高校生へ向けてのメッセージをお願いした。
牧志「僕は高校までは、自分のことが嫌いで自分に自信がなかった。NPO活動に関わるまでは自分自身も人生の2・3歩先なんて見えてなかった。失敗例です(笑)。でもきっかけで変われた。とにかくみんなも、部活でもゲームでも恋愛でも何でもいいから自分の好きなことをとことんやって欲しい。その経験が後で生きてくるし、自分の魅力につながると思う。僕の場合は日々チャレンジを続けてたら、進路が後からついてきた感じです。後は、自分の殻に閉じこもらず、自分の生まれた場所を出ようってことです。」
金城「私には、学校教育の中で夢を語れる場所がなかった。大学で自分の夢を肯定してくれる仲間に出会って初めて、夢を持って生きていいんだって思ったんです。休学していろんな場所に行き、いろんな人の価値観に触れて、いろんなおいしいものを食べて(笑)、とにかくいろんな経験があって今の自分がいます。興味があることは、現場に出向いて現場の声を聞いて欲しいです。そこから価値観が広がります。沖縄だけじゃなく、日本にも海外にもどんどん出向いて欲しい。それと、自分の師匠と言える人物との出会いから受けた影響も大きかったです。自分の憧れや目標となる人物を見つけて、その人と例えボランティアでもいいから、一緒に働いたりしてみようってことですね。それこそが、日常のカタヤビラです。人生を自分でデザインしよう!」
カタヤビラ ワークショップ(真和志高等学校)
NPO カタヤビラ
NPOカタヤビラは「沖縄の若者にキッカケを与えたい」という目的で、2008年4月に設立された団体です。沖縄の方言で「語ろう」を意味するカタヤビラは、中学、高校の授業枠に大学生、専門学生、社会人のボランティアスタッフと高校生の「語る場」を提供することで、高校生にキャリア教育を行っています。高校生にとって私たちは、親や先生のタテの関係や友達同士のヨコの関係でもない「ナナメの関係」です。そうしたナナメの関係である私たちだからこそ、中学生、高校生は普段誰にも言えない夢や悩みなどを話してくれます。夢や悩みを語ること、それが高校生の「キッカケ」となるのです。また、カタヤビラは、私たちにとっても、所属にとらわれることなく同世代の仲間と交流する場となっています。
牧志 朝英 Tomohide Makishi NPO団体 カタヤビラ 2代目代表、首里高校出身。琉球大学観光産業科学部 産業経営科の4年生。現「カタヤビラ」代表として団体の活動を幅広く展開中。2012年4月からは、読売新聞東京本社に入社予定。 |
●真和志高校企画運営チーム
【問い合わせ先】
NPOカタヤビラ
Mail:info@katayabira.net
HP:http://www.katayabira.net/
ブログ:http://katayabira.ti-da.net/